2025-08-01から1ヶ月間の記事一覧

『ねえ、グッド・タイムってどんな形してるか知ってる?』(@osenti_keizo_lovinson)

人が本を紹介する本をよく読む。自分だけで読む本を選ぶと、どうしても選書に偏りが出てしまうからだ。人のおすすめを読むことで、新しい空気を取り込んでいる。読んだことのなかった作家の、読んだことのない作品に触れ、少しずつ読む本の幅を広げていくの…

『ザリガニの鳴くところ』(ディーリア・オーエンズ/早川書房)

逃げ場のない場所が苦手だ。たとえば飲み会の席。なにかあったときにすぐ飛び出せるよう、私はいつも端の席を選んでしまう。一番奥に座らざるをえないときは、心臓が落ち着かない。だから、歳を重ねても、地位を得ても、私は末席でいたい。みんなにサラダを…

センチメンタルリーディングダイアリー (@osenti_keizo_lovinson/本の雑誌社)

「エッセイと読書感想文を合わせたものをインスタに投稿していて、それをもっと多くの人に読んでもらえるようにしたい。」 そんな相談をしたときに、おすすめされたのが@osenti_keizo_lovinsonさん(以下おせんちさん)の作品だった。インスタでエッセイと書評…

『遺骨と祈り』(安田菜津紀/産業編集センター)

私の祖父は広島の人で、被爆者手帳を交付されていた。晩年は認知症を患い、記憶が覚束ない状態だったが、そんな状態になった後も繰り返し語り続けたのは、8月6日の出来事だった。だから毎年8月になると、私は自然と祖父の言葉を思い出す。 私が広島市内を訪…

『たたないしゃもじ』(つかレモン)

この「唯一無二さ」の根源は、一体どこにあるのだろう。これは絶対、私には書けない作品だ。多分、当人以外の他の誰にも書けない。『たたないしゃもじ』なんてタイトル、私には絶対に思い付けない。てか、まず著者の名前から小粋だ。つかレモン。ふいに舌で…

『現代生活独習ノート』(津村記久子/講談社)

家、仕事、ジム、家、仕事、ジム……。毎日が淡々と過ぎていく。別に、ハリウッドスターのような毎日を送りたいわけじゃない。だけど、日々に刺激がなさすぎて、私はつい納豆に七味を多めにぶっかけてしまう。 でも、そんな平凡な日々も、ミクロな視点で見れば…

『ちぐはぐな身体』(鷲田清一/ちくま文庫)

(仏文学者の多田道太郎が)若者のつっぱったファッションをさして、あれは「泣いている」のだと言っている。「若い女性が奇抜ともいえるファッションで街を歩く。あれは、泣いているのだと思う。泣くかわりに、泣くにひとしい非合理的主張をしている」とい…